新聞報道・その他
(漢方医薬新聞 2000年8月)
漢方講談「漢方復興物語」熱演
初の試み大好評

 女流講談師による初の漢方講談が披露され、喝采を浴びた。
 7月22日K、東京都北区の滝野川会館で「漢方講談と東洋医学講演の集い」が日本医科大学の主催、源草社、三進エンタープライズの後援で行われた。200人の参加があった。この会で新作の漢方講談「漢方復興物語」を演じたのは神田香織師。新作講談の旗手であり、古今東西に題材を求め、さまざまな試みで講談界に新風を吹き込んでいるが、今回の漢方はまったく初めての世界。
 同大学付属病院東洋医学科の三浦於菟氏らの要請を受けへ多くの資料を読破した末に、5か月をかけて30分余の講談に仕上げた。
 『医界の鉄椎』を著した和田啓十郎を中心とした幕末から明治にかけての漢方医の姿がテーマ。子どもの頃に誰にも治せなかった姉の病気を、ぼろ着をまとった漢方医が見事に治してくれた。啓十郎はやがて成長し、医者のあるべき姿を思いえがき、漢方医として患者のために生涯を捧げる。
 テンポよく語りきり、大きな拍手が起こった。
 講談の前には三浦於菟氏による「東洋医学で病気を治す」の講演があり、実りある2時間の会であった。

東洋医学第28巻第9号(2000-9)
日本医科大学東洋医学科東洋医学講演会
「漢方講談と東洋医学講演の集い」
平成12年7月22日於:東京北区・滝野川会館

 去る七月二二日、本邦初の試みである、漢方をテーマにした講談の公演が、東京都北区の滝野川会館にて行われ、一般を含む約二〇〇名の観客を集めた。
 公演を行ったのは、神田香織師。始めに、講談の歴史を簡単に説明した後、本題である和田啓十郎著『医界の鉄椎』をテーマに、三〇分ほどにまとめ上げた作品を披露した。神田師は「講談はだしのゲン」公演で日本雑学大賞を受賞するなど、実力派として知られる。ジャズ講談や一人芝居の要素を取り入れた独自の講談で、新境地を切り開いている。   
 テーマとなった和田啓十郎は、東洋医学復興の立て役者。漢方を愛し、情熱を傾け、西洋化に沸く時代の流れに逆らって、漢方を擁護した人である。『医界の鉄椎』は、彼が当時の日本人のアイデンティティーを呼び覚まし、西洋医学万能主義に警鐘を鳴らすべく、明治四三年(一九一〇)、南江堂から自費出版した書籍である。昭和四六年に復刻版が出版されるが、漢方を志す人にとっては必読の書とも言える。
 講談は、和田啓十郎が、西洋医によって不治とされていた実姉の病気を漢方医が治したことから、医の本質を知り、自らも医者を志す内容。彼がなぜ、これほどまでに漢方復興に心血を注いだのかがよく表されており、興味深いものであった。神田師は調子よく、力強い語り口で、観客を魅了。漢方を知らない人でも、その根底に流れる熱い思いが伝わってくるような公演となった。
 本公演は、日本医科大学付属病院東洋医学科講師の三浦於菟氏らによる出演依頼によって実現したもの。初の試みである上に、歴史の長い漢方医学ゆえ、テーマを決めるにあたっては、かなりの苦労があったようである。しかし、自在に時空を飛び越える講談の長所を生かした、ドラマティックな脚色はさすがであった。神田師はこれ以後も、漢方をテーマにした講談を作っていきたいと話している。是非、今後の活躍にも期待したい。
 また、講談の前には、三浦氏による講演「東洋医学で病気を治す」も併せて行われた。一般向けに、正邪、虚実などの漢方の考え方を平易に説いたほか、同大調べの副作用報告も行い、漢方への誤解を解き理解を求める内容であった。講談という演芸と漢方とが劇的に融合した本公演は、漢方医学がわが国の文化の一つとして継承されていくための試みとして、意義あるものだった。
高知新聞 新潟日報
北日本新聞
京都新聞
信濃毎日01.11.30